#レコーディングダイエット

毎日食べたものを書きます

開業1周年に寄せてーーー語られない領域をひらく言葉を

確定申告をするときに出した開業届に書いた
開業の日の日付が8月1日なので
今日は開業記念日なのです。

書く仕事をしよう、と決めて
初めてギャラが発生する書くお仕事をさせていただいてから
はや1年。
週4日は大学職員として働きながらの開業なので
何とか食うに困ることもなく、
大学以外でも楽しいお仕事をいただけており
みなさんのおかげで充実した1年でした。

ぜんぜん書けない

書くことが好きで、得意だと思っていたから
書く仕事をしようと思ったんです。

でも、実際に仕事で書き始めてみたら
なんだかもう、ぜんぜん書けない。
なんて下手なんだろうと思うことばかりで、落ち込みます。

ギギギと歯を食いしばって書いては消し書いては消し
やっと深夜にこれと決めて書き上げたものが
印刷されたり、WEBに掲載されたものを見ると
ああすればよかった、こうすればよかったと思うことばかり。


起業支援ネット「aile」なんてその最たるもので、(ごめんなさい)
ここ2号くらい書かせていただいているのですが
それ以前は、起業支援ネット代表の久野さんが書かれていたんですね。

久野さんはとても文章も上手でいらして、
9月1日発行予定の次号は、久野さんにインタビュー記事を書いて
いただいたんですが、やっぱりものすごく素晴らしいんですよ。
わたしもインタビュー取材の際には同席させていただいていたので、
自分だったらどう書くかなあ、と思いつつ
久野さんの原稿を見たら、今回も本当にすばらしくて。

いつもインタビューでお聞きしたことの、半分も書けないなあと
思っていたんだけど、
久野さんはインタビューで、その方がお話されたことよりも多く、
伝わるもののある文章になっていて、すごいと思った。



わたしはいつも、自分よりも得意な人がいれば
自分がその仕事をする意味ないじゃん
得意な人がやればいいじゃん、と思ってすぐ人に投げるタイプなんだけど
こと「書く」ということに関してだけは、
身近にこれほどの差を感じる人がたくさんいても
それでも、自分で書きたい
書くことを止めたくないと強く思うので
本当にこれはやりたいことなんだなあと思うのだった。

(それどころか、久野さんの文章を読んで
「そうか、こういうふうに書いたらいいんだ」と思えたこともあったので
上手な人の方法を盗んで、したたかに自分も上達していける環境にいるんだから
ラッキーだと思うのだ。)

ファイナル・フロンティア

昨日、地域福祉サポートちたの代表の岡本さんと話していて
特に介護なんかの「福祉」の分野に、
医療とか、まちづくりとか、建築とか、「福祉」以外のジャンルの人が
どんどん入ってきているよね。
この地方では、最近は金融機関の人が一緒に「福祉」の事業所の人と
その取組について考えるっていう動き
もあるね。
まさに地域包括ケアってこういう動きが作っていくんだよね、
みたいな話をしていた。

でも、同時にわたしが心配していることは、
余計なお世話かもしれないけれど、
「医療」や「まちづくり」や「金融機関」の言葉(論理)で
福祉」の大切にしてきたことが
覆われてしまうのではないかということなんです、とも話した。


お医者さんや金融機関は、とてもたくさんのお金を持っているし
それを扱うために、情報を分析して、
どこにどれだけのリソースを投下したらいいかを判断する
スキルやノウハウもある。
なによりも、冷静に現状を把握して、これからどうしていったらいいかを
表現する言葉を繰り出すことがとても速くてうまい。
表現するといえば、建築やまちづくりの人たちは、
デザインやファシリテーション、イベントやワークショップなど、
たくさんの人の心を動かす楽しいしかけ作りがとても得意だ。

そして、こうしたことは
多くの「福祉」の人が苦手とすることだ。


だからといって、「福祉」がダメだと言いたいのでは決してない。

認知症になって、自分の心や体がアンバランスになった不安から
パニックになってうんこを壁に塗りたくってしまうおばあちゃんの
意志と気持ちを信じ、生活を強くあたたたく続けていくサポートをすること、

貧しい環境で、十分な養育も教育も受ける機会を持たずに育ち、
生きるためにできることが犯罪しかなくて、鑑別所や少年院に
出たり入ったりを繰り返す少年と一緒に、試行錯誤を繰り返しながら
少年本人と、それを取り巻く人々(家族、保護司、民生委員、就職先の会社の人)を
変えていくアクションをすること、

生活に疲れ果てて何かをする力も無くして
自室に引きこもってしまった人を決して見放さず、
本人が回復の兆しを見せるまでじっと待ち、
話を聞き、知恵と制度を駆使して精神的にも経済的にも支えていくこと、

そういうことは、どんなにお金があっても
プレゼンテーションのスキルがあっても難しいことなんだけど、
福祉」の人が積み上げてきた実践の中には
確かに、あるものなのだ。


こういうのって、本当に凄いことだとわたしは思うんだけど
なんつーか、「福祉の仕事の価値」について語られる言葉が
あまりにも少ないというか…

「子どもの/おじいちゃんの/利用者さんの
 笑顔が見られるのがうれしい」

みたいなこと、ばっかりっていうか…
いや、「笑顔が見られてうれしい」は、本当のことだと思うんですよ。
尊いことだと思うんですよ。
従事している人にとっては、無上の喜びだと思うんですよ。
でも、それ以外の言葉のバリエーションが少ないというか、
それ以外の切り口で語られる価値が、少なすぎるというか。
福祉」がやっていることのすごさ、って、絶対それだけではないんだけど
まだ、その「すごさ」を語る言葉が少ないんだと思う。

「笑顔」「幸せ」「みんなの」「誰もが」「やさしさ」みたいな
ふわっとした言葉か、
学者や専門家しか使わないようなムズかしい言葉か、しかないような気がする。
そしてそのことは、「福祉」以外の人とのコミュニケーションにおいて
すっごく不利になっているような気がする。
福祉」の人が、自分たちが大切にしてきたことの
ホントのところ、コアの部分が伝わらないという意味でも、
福祉」以外の人が、「福祉」のいいところをマネしたり
取り入れたりすることで成長することができないという意味でも。


大事なのは「言葉になっていないから、無い」ということでは
ないということだ。
今ある既存の言葉(論理)では、説明しきれないような価値、
語られてこなかったような価値が、あるのではないかということだ。

わたしは書くことで、そういう価値を見出すような
新しい言葉を開発したり
どうしても(既存の)言葉では伝えきれないようなことがあれば
どんな方法であれば伝えあえるのか、ということを
発見していきたい。


福祉」の分野にいろいろな人が参入し始めているということは
そこに、大きなお金の動きがあることを見込んでのことでもあり、
切実に必要だと感じている人が多いということでもあり、
「まだ語られていない言葉」を開発する、クリエイティブな
仕事ができる余地があると考える人が多いということではないかと思っている。
様々な人が様々な欲望を抱いて参入するフロンティアが
よりよく開拓されていくために、
自分の力を生かしていきたい。


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