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藤田嗣治展を見てきました

まだまだ会期が残っていると思っていた藤田嗣治展が日曜までだと土曜に気づき、急いで行ってきました。

yoshimi-deluxe.hatenablog.com

↑に書いたとおり、ほぼ「戦争画」だけが目当てだったので、他の展示はややスルー気味に見たのですが面白かった。
わたしは何でも繊細なものよりどっしり濃いものが好きなので(水彩よりも油彩、フランスよりもドイツ、お出汁よりも赤味噌みたいな。篠田桃紅さんも言ってたけど、濃くて美しい、美濃ですね美濃)
藤田嗣治がいちどフランスを出て中南米や中国を回った時の絵が好きだなあと思った。大胆でカラフルで。

展示を見ながら、彼がすごくたくさんの絵を描いて、それぞれに新しい表現、新しいモチーフ、新しい方法にどんどん挑戦していると感じた。最初から完成させようとか、完璧なものを出さなくてもいいんだ。何でも見てみるやってみる、そしてそれを「まだそんなレベルじゃないから」とか言っておそれずに発表していくことが大事なんだと思った。描いて描いて、そのたびに彼が自分を更新していったのだと思う。

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藤田嗣治アッツ島玉砕」
画像はこのサイトから借りました。→
http://tom1051.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/20141018-8915.html リンク先には細部を明るく見やすくした写真もあります

そんな中で、「戦争画」だけは異様におどろおどろしいものだった。超絶な技巧、劇的な構図、絵の具を塗り重ねるときの筆圧が伝わってくるような力強さ。凄まじい迫力だ。けれど、この三枚だけからは、他の作品にあるような創作の喜び、新しい世界の一面を発見したときの喜びのようなものを全く感じられない。どういう気持ちで彼が「戦争画」を描いたかは分からないけれど、最も「日本」という世界とつながりたいと思って描いたもののはずだと思う。(たぶん)西洋画の技法で、玉砕する日本人の絵を描いている。公開された時には「アッツ島玉砕」の横に藤田本人が賽銭箱を持って立ち、見る人がお金を入れると彼はお辞儀をしていた…という話も読んだ。

ミュージアムショップで「戦争画RETURNS」を読んでいたら、会田誠さんの絵が目に止まった。

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会田誠「大皇乃敝尓許曾死米(おおきみのへにこそしなめ)」(戦争画RETURNS)1996
画像はこのサイトから借りました。→
http://www.gei-shin.co.jp/comunity/24/3.html

前にこれを見た時はピンと来なかったけど、これはまさに「アッツ島玉砕」へのオマージュじゃないか!と感じて戦慄した。グアムやサイパン島の旅行パンフレットの上に蠢く油彩の黒い影…。「アッツ島玉砕」で血と埃にまみれた兵士が折り重なっている様子がフラッシュバックする。

わたしは会田さんの絵が好きで「元ネタを確認しに行く」くらいのつもりだったんだけど、いやいやどうして。わたしはカバー曲なんかでも「元の曲よりかっこよくカバーできなければカバーする意味ないじゃん。カラオケ行っとけ」という持論を持っているんだけど、いいオマージュ、いいパロディ、いいサンプリングって、それ自体が素晴らしいのはもちろん、サンプリングしたことで元ネタ自体がより凄みを増すものなんだと思った。

藤田はフランスで最初に評価されたとき、「わかりやすい日本趣味で外国人に媚びている」なんて日本画壇から叩かれたとあって、これって村上隆さんが叩かれたときと同じでは…と思い、なんか全然当時と変わってないじゃんとか思ってハッとした。「戦争画RETURNS」って、本当にイヤな意味で「戦争画」がいまの時代にも「かえって」きているんじゃないかと。政権が都合よく人気の歌手や芸能人を取り込むだけでなく、ふつうの人まで誰に言われたわけでもないのに「反日だ」と何かの表現を非難したり、政治的な表現を避けたり。もう戦前や戦中と同じじゃないか。

戦争画リターンズ──藤田嗣治とアッツ島の花々

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MONUMENT FOR NOTHING

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四百字のデッサン (河出文庫)

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