#レコーディングダイエット

毎日食べたものを書きます

ブルーインパルスと私

2020年5月29日
■東京上空に「ブルーインパルス」、 医療従事者に“不死鳥”の隊形で
news.tbs.co.jp

 私が育った市には航空自衛隊の基地がある。秋には基地で「航空祭」というイベントが催され、ブルーインパルスがアクロバット飛行をする。毎年タダで見ていたので、ニュースになるほどありがたみのあるものとは知らなかった。

 故郷は田舎だけれどそこそこ豊かな自治体だったと感じる。大都市や中核市へのアクセスが良い典型的なベッドタウンであることに加え、基地マネーや関連産業で潤っているのだと思う。国道沿いに新しいお店がどんどん建ち、親が自衛隊や航空機関連に勤めている同級生はみなきれいな二階建ての家に住み、車も夫婦で1台ずつ持っているのが普通だった。

 しかし物心がつく年齢まで育つと、航空祭の時期に限らず毎日飛んでいる飛行機は戦闘機であることに気づく。自分や友だちの暮らしは戦争のための道具に支えられているのだ、と思うと目に映る風景が急に暗くなった。
 
 飛行機がゴーゴーいうのは日常だった。飛び方や飛ぶ場所によっては授業が中断するくらいの騒音だった。私は生まれたときから聞いているので慣れてしまっていたが、転勤で新しく来た学校の先生はとても驚いていた。そして沖縄の話をしてくれた。小さな基地ですらこんなにうるさいのに、広大な米軍基地のある沖縄はいかばかりかというような話だった。

 大学生になって、電車で隣の市の繁華街に行ってお酒を飲むことが日常になった。あるお店で同じくらいの年齢の男の子と知り合った。九州出身で、自衛隊員だという。彼いわく「地元では高校を卒業して働こうと思ったら自衛隊くらいしかロクな働き口がない」とのことで、親の強い勧めで入隊したそうだ。本当は美容師になりたかったと言っていた。この辺(東海地方)だと大きな工場やその下請けのそこそこの規模の職場があり、高卒でもまあまあの給料をもらえることが珍しくないので彼の話は新鮮だった。自分もこんな何もないクソ田舎に居たくないと思い続けていたが、彼の故郷を想像すると胃の上のほうが締め付けられるように苦しくなった。

 いま、このブログでも貧困がどうとか社会問題がどうとか書くことが多いけれど、「誰かを貧困に陥らせているのは私だ」「私こそが社会課題を作り出しているのだ」という視点から書きがちなのは、小さい頃に感じた「自分の暮らしが戦争の道具に支えられている」という感覚なのではないか。と、今日ブルーインパルスのニュースを見て思った。

ひこうき雲

ひこうき雲

  • アーティスト:荒井由実
  • 発売日: 2000/04/26
  • メディア: CD