#レコーディングダイエット

毎日食べたものを書きます

ファンタジーが現実をつくる

2020年4月13日
何となくだらだらモヤモヤして半日ほとんど何もせず過ごしたのち、気になっていたお店のペスカトーレを食べることにした。ちまちま読んでいる小説、柚木麻子さんの「BUTTER」で「その時、一番食べたいと思うものを好きなだけ食べるのよ。耳をよく澄まして、自らの心や身体に聞いてみるのよ。食べたくないものは決して食べないの。そう決心した瞬間から心も身体も変わり始めるわ」と、木嶋佳苗をモデルにした登場人物が言っていたので、雨の中わざわざ出かけた。寒かった。
スパイシーで贅沢に作ってあって、何もかも忘れてずっと食べていたいほど美味しかった。夕方からは冴えわたって、でも苦しみながら原稿をやった。
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2020年4月14日
何にでもミーハーで、変わり身の速さだけで世の中を渡ってきた。しかし今回はダメで、zoomの便利な機能を試してみようとか、remoをやってみようという気に全くならない。新しい技術を取り入れることに抵抗がない方なので、必要とあらばすぐに実装するんだけど、今回はとにかくwithコロナとかポストコロナとか、そういうことを考える気にならないし、正直自粛もバカバカしいなと思っているとこがある。思ってはいるけど出かけてませんよ、でも私は自粛が嫌だと思っていることだけは言っておきたい。嫌だ嫌だ、ほんとうに嫌だ。嫌だと言ったらそれだけで人殺し扱いされそうなのもほんとにヤダヤダヤダヤダ。感染するのもさせるのも嫌、でも自粛もファッキン嫌だ。

こうやって時流に乗っかれなくなるのが老いるということなのかな?と思う。あるいは、私は人生の躁鬱が激しいというか、バイオリズム的に世界の全てが嫌になる時期と、ガンガンいこうぜといろいろやろうぜを混ぜて1000倍増しにしたシーズンが交互に来るタイプなので、ダウンな時期と今がたまたま重なっただけなのかなあ?とも思う。

さいころから本が好きで「本に書いてあること」が「本当」だと思ってきた。
男女は平等です。国籍や肌の色で人を差別してはいけません。職業に貴賤はありません。おかしいことにはおかしいと言いましょう。そう思って堂々と生きて、発言して行動してきたのに、あれ…?なんか世間はそうではないみたいなのだ。みんな建前を生きていて、そうでない人はアホで下品な田舎者と思われ嘲笑されているみたいなのだ。
だけど私は本のほうが好きで、本みたいに生きたくて、本に書いてあるような世界になってほしかった。本のほうがリアルだった。だからいつも「なんで世界は本に書いてあることと違うの!?」と思って怒り狂っていた。本というイデア(理想)の世界に現実を近づけるべき、私の思いはいつもそうだった。というか、イデアのほうがリアルで、現実のほうがフェイクだった。いつまでもイデア、理想、ファンタジーのことを考えていたい。しかし、目に映る全てのことはクソ・メッセージ。

で、今のこのコロたんフィーバーの状態って、現実現実現実現実現実現実現実現実現実現実現実ばかりの毎日なんじゃないか?と思ったんです。手を洗え。出歩くな。食うことと寝ることだけ考えろ。むちゃくちゃ現実である。

もともと衣食住だと「食・住」には興味がなかった。そこそこカロリーがとれて、寝られれば良い。でも「衣+それ以外」には湯水のごとくお金を使った。洋服、靴、化粧品、酒、酒、ダンス、音楽、本、酒、インターネット。さいきんは映画も少し。実用品(現実)ではなく、ファンタジーに関わるモノだからだ。
ひとつ前のブログで、「会社(公)がプライベート(私)に侵入するのが嫌だ」みたいなことを書いたけれど、自分にとっては「ファンタジーに現実が入り込んでくるのがイヤ」という面もあったのではないかと思った。

今の状況を戦時中に例えるのは嫌なんだけど、それでも戦争中なのに浮世離れしたことばっか考えて、空襲の警報が鳴ってるのに避難せず、ボーっとしてて死んでしまった人とかいたんじゃないかなって思う。自分もその時代に生きていたらきっとそうだっただろう。

ポーランド出身のカロリーナ・ステチェンスカさんという方がいる。漫画「NARUTO」を読んで将棋が大好きになり、来日して女流棋士となった人だ。大塚製薬カロリーメイト)がスポンサードしていたそうで、その時のアニメが素晴らしくて見るたびに泣いてしまう。彼女の挑戦を、現実を、香車銀将や歩兵が応援して、勇気づける。


カロリーメイトweb movie|「すすめ、カロリーナ。」本篇

私もそうだった。現実があって、その余剰でファンタジーを楽しんでいたわけじゃない。ファンタジーがあって、初めて現実に向き合う力が持てた。それを不要不急だという人は言えばいいと思う。その程度で揺らぐような文化ではない。

BUTTER (新潮文庫 ゆ 14-3)

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