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【前編】あいちコミュニティ財団総括シンポジウムレポート

2020年2月8日に開催された「あいちコミュニティ財団総括シンポジウム」に行ってきました。
2017年頃から様々な不祥事が明るみに出た財団のこれまでを総括(主に反省)しようとする会でした。
2017年からの財団の色々をご存知ない方はこちらの記事を読んでください。
headlines.yahoo.co.jp

どうしても財団を悪く言うような書き方になってしまったのですが、それはひとえに私の筆力のなさのたまものです。結論から書いてしまいますが、私がくさしたいのは主に財団にのっかって何かいいことがあるかも~とか思ってたり、私も寄付したから社会課題の解決にいっちょかみした側だし~と何もしなかった自分や、自分のような人であって、
決して有給無給を問わず財団のために働いていた/いる人や、財団から助成を受けた人や団体ではありません。私みたいに外側から何目線だよ?ってな感じでやいやい言うだけの人たちをよそに、皆さんは目の前のことに一生懸命打ち込み、できる範囲で精いっぱいのはたらきをされていた/いると思っています。図々しい言い方ですが、それを誇ってほしいです。

2017年以前の証憑類存在せず

最初に、昨年から新たに財団の常任理事となった戸枝陽基さん(社会福祉法人むそう理事長)が財団のこれまでの活動と、2017年のパワーハラスメント・残業代未払が明らかになった以降のことを説明されました。

戸枝さんによれば、財団は2013年に600人の出資者により1000万円近いお金と多くの期待を集めて発足。その後2016年までは「順風満帆だったと思われる」とのこと。運営に陰りが出てきたのは2017年頃からではないかと推測されていました。

推測されていた、というのは、2018年になり入れ替わったスタッフで調べたところ、なんと2017年以前の証憑類(領収書など支出の裏付けとなる書類)がごっそり無くなって所在が不明になっている(!)のだそうです。戸枝さんは、これだけきれいさっぱり無くなっているということは、何ものかが故意に持ち出した可能性も否定できないと説明され、会場はドン引き。いやいやこれ寄付金の流用よりもニュースになっていい事件ではないのでしょうか…。いつ、どうして紛失したのか分からないですが、毎年の監査とかどうやっていたのでしょうか。公益財団法人がこれでいいんでしょうか。私益無財産個人であるところの私だって確定申告の書類を5年は保管せよと言われているのに…。

ともあれ18年以降、新しく入られたスタッフさんがパソコンに残っていたデータ等を分析して経営状況を調査されたそうです。その結果分かったことは、資金繰り表もなく、事業別の収支も計算されておらず、経営的には場当たり的に新事業を起こしてはお金を集める自転車操業のような状態だったのではないかと。ゆえに、寄付金の流用に関しては起こるべくして起こってしまったのではないかと分析されていました。
これらをもとに戸枝さんは下記のように総括(反省)してお詫びされました。

★財団として

  • 当時の代表の木村真樹氏の経営者としての能力に不足があった
  • 財団に組織として運営を改善するしくみがなかった(理事・評議員の責任が重大)
★戸枝さん個人として
  • 2013年から評議員を務めていたが、理事会をチェックする機能を果たせなかった
  • 就任当初から運営の危うさを感じながら、会議を欠席することも多く、そのままにしてしまった
  • にも関わらず、自分(戸枝さん)が役員だからという理由で財団に寄付してくれた方がいたとしたら、申し訳ない。
★寄付者に対して
  • 寄付者(特に最初の出資者)は被害者でもあるが、情報公開をせまり実態をチェックすべき立場でもあったと思う。

本当は表に出したくなかったであろうことも、全部ではないと思うけれど公表され、関わり方に濃淡はあったにせよ、財団の設立当初から現在まで関わり続けてきた戸枝さんが自身と団体としての両方の立場から経緯をまとめ、公の場で真摯に謝罪されたということで、やっと財団はひと区切りつけられたと感じた方が多かったのではないでしょうか。

これからの財団のことなんか自分で考えろ

会場からも、ネット中継を見ていた人からも「それで、これから財団はどうしていきたいわけ?」みたいな声を聞きました。
でも私は、今回はそれは無くてもよかったと思います。ひとつは、この3年間、きちんとしたふりかえりもなくやってきてしまったのだから、まずはそれをちゃんとしてからだと思ったからです。

もう一つは、財団の新執行部の人の思いもあるでしょうけど、「コミュニティ財団」であるのならば、財団を支えるというか財団をとりまくというか、財団と何かしら関係を持っていきたいと考えている人の思いこそが、これからの方向性を決める時に大事だと思うからです。

財団は2017年に公になった色々の後、その対応のまずさも含めて急速に人々が離れていった状況があるので、はたしてあいちコミュニティ財団にとってのコミュニティとは何ぞや、誰からなるコミュニティなのかという話から始めないと意味がないんだと思います。というか、この問いは2013年の設立当初にもあまりされていなかったと思うので、もう一回した方がいいのではないかと思いました。そういう問いをテーマに話し合いたい人が今もいれば、ですが…。

要するに、財団の執行部としての経営上の総括はこのシンポジウムでなされたけれど、寄付者や、財団を支えていた、支えたかった、あわよくば財団から何かのメリットを享受したいと思っていた人(それは他ならぬ私なんですけど)による総括はまだなされていないのではないか?と私は思いました。

この日は戸枝さんの説明の後に、ずっと元代表木村真樹さんを応援していた萩原喜之さん(一般社団法人三河の山里課題解決ファーム理事)と、久野美奈子さん(NPO法人起業支援ネット)もそれぞれの視点からこれまでのことを総括されました。
萩原さんは権力を持ってしまったリーダーの傲慢さや、そのリーダーに依存してしまった周りの状況、SNSで指一本で簡単にシェアしたり寄付したりできることで、フワっとした「何か正しいことをしている感」のみが増幅し、市民活動にあったはずの自発性や批判精神が育たぬまま、発信力のある団体やリーダーの知名度や権威だけが高まり、ますます増長させてしまったのではないか…といった指摘をされていました。*1

久野さんからは「自らに都合の悪い意見を聞こうとしない元代表の木村さんにも確かに問題はあったが、周りが『木村さんさえ変われば財団は良くなる』と思ってしまったことも傲慢だった。もっと財団として目指すべき方向はなんなのか、今やっていることは目指すべき方向にとってどうなのか、という議論をするべきだった」という鋭い指摘がありました。

参加のしくみをどうつくるか

戸枝さんが最後にチラっと「財団に対して、自分はあれができますよ、これができますよ」って来てくれる人がいたらなー、そういう人を増やしていきたいなーみたいなことをおっしゃっていました。
いると思うんですよ、そういう人。
でも、今の状態だと「戸枝さんがいるから財団で働こう」みたいな人ばっかになるような気もするんですよ。その動機自体は決して悪くないと思うんですけど、そればかりだと「木村さんに任せておけば大丈夫だろう」となっていた、以前の財団と同じ状態になっちゃうんじゃないでしょうか。そういうコミュニティが、コミュニティ財団なんでしょうか。

新代表の佐藤真琴さん、そして戸枝さん、日本福祉大学の原田正樹先生、同じくNPO法人せき・まちづくりNPOぶうめらんの北村隆幸さん、NPO法人外国人就労支援センター理事の山本梢さんと、皆さん前例のない事業を切り拓き、難しい事業を軌道に乗せてきたパワーと発信力と力強いネットワークをお持ちの方ばかりが新しく理事に就任されています。

でも、自分がこの組織に入って事務局の仕事をするとしたらと考えると、大変勉強にはなると思うんですけどめちゃくちゃやりづらい気もしますもん。(笑)「お前は経営が分かっていない」と言われれば「ははあ、その通りでございます」だし、それぞれ地域の課題もよくご存知の方ばかりなので「お前は現場が分かっていない」と言われたらぐうの音も出ないと思います。もしかしたら、財団から助成を受ける側の団体だとしても、同じように感じてしまうかもしれません。「伴走支援しますよ」って言われたらちょっと怖い、みたいな…。…きっと私の根性がねじくれているだけだと思んですけど…。でも、社会を変えるためにそういう厳しさ/正しさも必要だ、って言われたらそうなんだろうけど…一歩間違えればパワハラの温床にもなってしまうのでは、とも思います。(違うかなあ~~~)

いや、でもこれはあくまで私個人の主観なんで、素晴らしい理事の皆さん(本当に素晴らしいと思っています、本当に)の意向と共に歩んでいくということで、寄付者やそれを取り巻く環境、便利な言葉で言えばステークホルダーの皆さんがそれでいいならそれで全然いいと思います。


でも、コミュニティ財団はそうじゃないんだ、というなら…
知識も経験も足りなくて、小さくて頼りなくておぼつかない声にも価値を見出して、ぐずつきながら進む団体を応援するんだということなら、そういう世論、そういうよわよわな人や団体を下支えするコミュニティが必要なのではないでしょうか。(それはパワフルなリーダーとしても反対するところではない、はず)

そして、やっぱり自分は、どんなに素晴らしい方がリーダーとなったとしても、それはそれとして、「私にとってコミュニティ財団は必要なのか」「自分はどんなコミュニティ財団だったらいいと思うのか」ということも考えてみたいなと思うので、それを後編に書こうと思います。つづく…。

【後編】はこちらです。
yoshimi-deluxe.hatenablog.com

*1:萩原さんの言葉そのままではなく、かなり私が意訳しています