#レコーディングダイエット

毎日食べたものを書きます

苦手を言葉にするということ

news.yahoo.co.jp

この記事の中にもあるんだけど
精神障害発達障害のある人がはたらくにあたっては

自分の「苦手」なこと(どうがんばってもできないこと)を
オープンにして、出来ないことは他の人に
やってもらう/助けてもらうことが必要だ
っていうのがセオリーみたいになっているんです。


ロジックとしてはもっともなんだけど
それって、そんなに簡単にできることなのかなって
今となっては思う。
わたしも一時期、精神障害発達障害のある人の
就労をサポートする仕事をしていて、その時は
毎日こういうことを伝えていた。
↑の記事によると「それは障害があっても無くても
同じですよね」となっている。


でも、わたし自身(いちおう健常者ということになっている)
をふりかえってみると、
今までの職場で、自分の苦手なところを
堂々と同僚や上司や取引先に伝えていたか?と思うと
全然そんなことなかったと思う。

やったことがなくても、どんな仕事でも
「できます」「やります」と言っていた。
今もほとんどそう言っている。

なぜなら、そう言わないと
次の仕事がないのではないか、
自分の成長につながらないのではないか、
やる気がないと思われるのではないか、
と思っていたからだ。

わたしの友人は「苦手なことをオープンにしたら
弱みにつけこまれて、いじめられるのでは?」と
言っていた。

苦手なことをオープンにするためには
その人自身の覚悟というよりは
「苦手をオープンにしても、決してとがめられたり
 排除されたりすることなく
 ちゃんと受け止めてもらえる」
という保証の方が、ずっと大切なのではないだろうか。


それまでの人生の中で、
「失敗してもやり直せる」
「失敗しても笑って受け止めてもらえる」
「失敗しても見捨てられない」
という経験の裏付けがある人にとっては
自分の弱さをオープンにする際のハードルは
だいぶ低くなるのだろうと思う。

自己理解も大切だけれども、
理解した自分をアウトプットするためには
会社/社会の側の寛容さのほうが大切ではないだろうか。
会社/社会に対する信頼、というのは
受けいれられた経験からしか生まれないと思う。

きたかぜとたいよう (イソップえほん5)

きたかぜとたいよう (イソップえほん5)

病院行くのもアパート借りるのも、生きてるだけで命がけ

blog.livedoor.jp

(記事より)
自分がかかる医療機関や薬局が増える度に、事前に追加登録の届出をしないと受給者証適用外になってしまいます。私のように在宅で療養していれば、訪問看護先が増えたり急なレスパイト入院が必要になったりし、医療機関は増えます。現在は、その度に保健所に走り、追加登録申請をすることになります。しかも、追加登録後の新しい受給者証が届くまでには、2~3週間かかるのです。
事務手続きが困難な難病患者に対して、極めて複雑な事務手続きを強いています。その結果負担を受けるのは家族をはじめとした介護者なのです。これは、患者の精神的ダメージには十分なものです。


難病患者だけじゃなく障碍者も高齢者も子どももそう。
「健常」で、大卒で、イザとなったら
役所の人に文句言ったるでーみたいな気力のある自分でさえも
「????」となってしまうような手続きを
いろんな人に強いているなあと思うのよ。

これは役所だけじゃなくて
携帯電話や保険やアパートの契約とかもそうだなあと思う。
みんなあんま言わないけど、契約書類の内容なんて
難しくてわかんないよね。。。
そしてさらに移動が不便ならめんどくさいことこの上ないよ~。
こういうの一体どうしたらいいんだろうね?


何か悪いことする人がいるから本人確認を厳密にしたり
微に入り細に入った説明やら規則やらあるんだろうけど
医療とか保険とか
携帯とか住宅ってライフラインでしょ。
手続きを簡単にするか、
手続きを簡単にできないのであれば、それをサポートするのが
「合理的な配慮」というものだから
その仕組みを作らないといけないなあ。

っていうことを考えるのが本当は
「福祉の仕事」(ソーシャルワーク)なんじゃないかなって
わたしは思うので
今日も頑張って社会福祉士試験の勉強をして…
一文字一文字に力をこめて、ライターの仕事をするのだ…


しかし恩田君*1は、
いまの恩田君にしかできない心からの発信をすることで、
世の中を鋭く照らす普遍的な価値を提供しとるなー。
凄いなー。
自分も変に迎合したり媚びたりせず、自分のセントラルドグマから言葉を紡いでいけばいいんだなと気づかされた。恩田君に負けないように自分もがんばるぞ。*2

ondasatoshi.com

*1:恩田君、と「くん付け」しているのは、恩田君とわたしが高校の同級生だからです

*2:高校時代から一回も何かで勝ったことないけど

大垣にケン・イシイ&DJヨーグルトが来ますよ

大垣市ケン・イシイ&DJヨーグルトが来ますよ。

liverary-mag.com
最近Liveraryさんでもちょっとだけ書かせていただいています。この記事もわたしが書きました。こういうイベントの情報とか知れるからLiveraryの記事書くの楽しいな~

大垣にそんな箱あったっけ?とお思いの皆さん
ソフトピアジャパンのセンタービル駐車場が会場ですよ。
ウェアハウス感バリバリですよ。

このイベント、東京にも配信されて
東京ではVRで体験できるらしく
VR技術を体験するにはどっちかっつーと東京がメインじゃね?って気もするんですが、岐阜、しかも大垣でテクノの大きいパーティってあんまないし、駐車場っていうロケーションも面白いですよね。
最近では藤原ヒロシさんも駐車場でお店を出してるらしいし、駐車場でなんかやるの流行ってんのかもしんない。

しかも、どこからお金出てんのかわかんないんだけど
大垣会場のチケットがなんと前売1000円/当日1500円!!!
安い!安すぎる!
これMagoとか名古屋のクラブだったら3000円か4000円とりそうでしょ。
テクノ好きなら大垣まで行く価値が全然ありそうです。大きい音出せるんかなっていう心配も含め、ウェアハウス/かつてイギリスでやってたレイヴ感を感じられるロケーションでもあるので~。

MAKIN’LOVE AGAIN MIX

MAKIN’LOVE AGAIN MIX

ジェリー・トーンズ

ジェリー・トーンズ

FRESH PUSH BREAKIN’

FRESH PUSH BREAKIN’

Tokyo Techno Drive (SEKITOVA Hundred Years House Dub)

Tokyo Techno Drive (SEKITOVA Hundred Years House Dub)

ぴあMOOK「東海おいしい魚の店」「東海ハンドメイドBOOK」が出ましたよ

お手伝いさせていただいた
ぴあさんの「東海おいしい魚の店」「東海ハンドメイドBOOK」が
9月末に発売になりました。


「魚の店」はおすし屋さんの取材を少し
「ハンドメイドBOOK」では三河地区のお店を担当させていただきました。
ページ数からしたらほんのちょっとしか担当していないのですが、ちゃんと名前をクレジットしてくれるぴあさん、ありがとうございます。。

字を書くのがライターの仕事だと思ってたのに

ライターというのは記事を書くのが仕事だと思っていたんですが
この「ぴあMOOK」のお仕事で、ライターがやることは

  • 取材先のアポ取り(ムックの趣旨説明、掲載のお願い、取材の日程調整)
  • カメラマンさんの手配(ムックの趣旨説明、協力のお願い、日程調整)
  • 取材時の撮影指示(カメラマンさんにどの商品をどう撮ってもらうか決めて指示)
  • 簡単なレイアウトの指示(どの写真をキリヌキ/角版で使うか等々をデザイナさんへ)
  • 校正

などなどでして、そうかー誌面のディレクションもライターが
やるのか~、とやりながら思いました。
他の仕事では進め方が違うことも多々あると思いますが
ライターってインタビューしたり、机の前に座っているだけじゃなくて
電話したり頭を下げたり現場で機転をきかせたりすることにもずいぶん時間を割かないとできないんだな~と分かりました。
以前にも「ライターは家でひとりでできる仕事だと思っていたのに」というエントリーを書きましたが、今回のお仕事では、それが全くの間違いであったことに再び気づかされました。文章力と同じかそれ以上に社会性がないとできんなと。。。

フリーランスの仕事のふりかえりかた

皆さんは、雑誌やフリーぺーパーなんかの
「美味しいお店を紹介する記事」を見て

「こんな記事くらい自分でも書けるわ」
「こんな下手くそな文章で金もらってんのか」

と思ったことはありませんか?
ごめんなさい、わたしはあります。

しかし、いざ取材して書いてみると全然書けなくて…。
キャッチは20文字、キャプションは40文字、
本文でも120文字とかそれくらいなんですよね。
取材では、すごくたくさんのお話を聞かせていただけるし
お店の雰囲気がよければそれも伝えたいし
試食をさせてもらったときの感想も入れたいじゃないですか。
限られたスペースの中で「何を書かないか」を決めることが大変だなあ、なんて思ってうんうん言いながら書きました。

で、出来上がったムックを見てみたら
ベテランのライターさんが書いた記事はやっぱり全然違うんですよね。
同じ文字数、ほぼ同じ条件で取材しているのに
そのお店のどこに注目するか、そのお店の「らしさ」をどう切り取るか
かつ、読者も読んでいてワクワクできる内容になっている。
短い文章の中で、こんなに豊かな表現ができるんだと思った。
字数が少ないとか時間がないとか言ってないで
こういう仕事をするのがプロなんだなと思い知らされた。

フリーランスだと、ぼんやりしていると
自分の仕事に対するフィードバックがほとんど受けられないということに気づく。
良ければまた仕事をいただけるけれど
そうでなければ次はない、というただそれだけだからだ。
良かったとしても、どこが良かったか、
仕事をいただけたとしても、なぜ自分なのかは
積極的に自分から聞いていかないとほとんど教えていただくことはない。

ムックのお仕事を通して
編集の人に赤を入れられたり*1
他のライターさんの文章と自分の文章を比べることが
自分の仕事をふりかえる機会になる。
ともすればぎちぎちにやることを詰めて、ひとつずつの仕事が
「やりっぱなし」になってしまいがちなので、ありがたい機会だ。

次はクライアントや読んだ人に、どうだったか聞いていこうと思う。
それはとても怖いことでもあるけれど
それが一番の営業活動にもなるんだな~とも思う。



というわけで、皆さんぴあMOOK読んでくださいね~。
どのお店の方も優しく(怒られたこともあったけど)
また、自分でお店を経営していくということに対して
派手ではないけれど、静かな情熱を感じる方ばかりでした。
少しでもそういう方たちのお役に立てて
お客さんも楽しい食事やお買い物が出来たらうれしいですね。

*1:文章を赤字で直されることです

杉浦医院の森亮太先生の本が出ましたよ

わたしが大変お世話になっている
名古屋市昭和区・八事の杉浦医院の森先生が、先月本を出されましたので、宣伝いたします。

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森先生というと、ご存じの方は
よく錦で飲んでいるとか、いつも錦にいるとか、
錦で豪遊しているとか思われているかもしれませんが、
それだけではなく、
午前中は杉浦医院で診察、
午後からは訪問診療に出かけ(いわゆる往診というやつですね)
夕方に帰ってまた医院で診察、
時にはその後炊き出しで野宿生活などをされている方の健康相談のボランティアに行き、*1
そのほか休みの日には外国人医療センターのボランティアとかもしておられます。

そんな中で森先生が考えておられたこと
特に高齢者の医療や生活に関することを
満を持して本にまとめられました。

現役の医師を続けながら、こういうことを
はっきり言っちゃうのは勇気がいるんじゃないかな~
と思うようなことも書かれています。

わたしたちはお医者さんに言われたことは
絶対、と思ってしまうけれど
この本を読んでみると、案外お医者さんときちんと
コミュニケーションを取れている人は少ないんじゃないかなと思いました。

あまりいい喩えではないですが
携帯電話を買う時に、携帯電話屋さんに言われるがままには買わないですよね。
自分がどういうときに電話を使うか、どれくらい使うか
多少不便でも必要ない機能はいらないよとか言って
適した機種を買いますよね。

医療も同じで、お医者さんは医療者の立場から
アドバイスをくれるけれども
それを自分の身体にフィットしたものにするには
もっと自分の身体や生活をどうしていきたいかを
ちゃんとお医者さんに言わないといけないんですよね。
てな感じのことが書いてあります。(ざっくりした説明…)

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

ところで、どうして最近森先生にお世話になっているかというと
わたくし、毎週月曜~水曜は、杉浦医院で
上述した訪問診療のお手伝いをさせていただいているからなのです。

ちょうど自分が大学職員を辞めてフリーライターになろうというときに
先生に声をかけていただき、訪問診療の記録をとったりする仕事を
させていただいています。

森先生とは、以前にホームレス状態にある方や生活に困っている方の
支援活動をしている時からお世話になっており
ご縁あってこのようなことになりました。

訪問診療でおうかがいするお宅は
名古屋市東部という土地柄からか
ドラマでしか見たことのなかったような豪邸もあれば
生活保護を受けている方までさまざまです。
訪れるたび、このような階層の分断をつないだり、混ぜ合わせたりしていくようなものを書きたいな、と感じます。
また、医療と福祉の分断ぶり、話の通じなさぶりもこの辺にあるのかなあ、なんて思っています。

森先生は、こういうわたしをライターとして育ててくれようとして仕事をくれているのだと日々感じるので、それに応えられるようにスキルアップしないといかんなあと思います。

森先生以外にも、起業支援ネットさんも、CSRコミュニティの皆さんも、わたしに今お仕事をくれている方はみんな、そういう期待をもっていただいていると思うので、ちゃんと社会に還元できるような記事を書いていかんといかんなあと。
上手くいかないことが多くて焦るけど、ひとつひとつの仕事を丁寧に。クライアントからいただいたお仕事に少しでも価値を高めたアウトプットをお返しして、自分の力にもしていかないと。

子どものときから、わたしは自分自身には大した力がなくても、なぜか目上の人にフックアップしてもらえるタイプだった。この類まれな状況を絶対に生かしていかないとーと思う。皆さん、いつもありがとうございます。毎日書きます。
そして森先生の本買ってください。(笑)
Amazonか、名古屋市内の大きい本屋さんか、杉浦医院で買えます。

*1:錦へ行くのはこの後のようです

女の子じゃなくて上等だぜ!

headlines.yahoo.co.jp

これ、動画は削除されちゃったせいか見られてないんだけど
「25歳以上は女の子じゃない」ということよりも
「女の子」以外の女に価値を見出せていないことが
CM作った側(にそういう意図があったか見てないからわかんないんだけど)にも批判している側にもあるんじゃないかな~と思う。

「子孫を残したいという欲求=本能=男が欲情するかどうか」みたいな言われ方がされますよね。だから閉経した女には魅力がないみたいな。(過激な言い方でごめんなさい)でも、もしこの図式が本当だとしたらパイプカットしたりコンドームをつけたりした状態では勃起しないんじゃないの?と素朴に疑問に思います。若いからとか、生殖能力があるから欲情するんじゃないと思うんですよ。ヘテロ男性の皆さんは、「本能だ」とかいう思考停止状態に逃げずに、自身の欲望のメカニズムに向き合ってみれば、自分がどんな人・コト・モノに欲情しているかが分かるんじゃないでしょうか。そこから、真に「女性という他者」と向き合えるようになるじゃないかしらと思います。

女性(特に若いヘテロ女性)は、男の人だって自分が何に魅力を感じているかなんて実は分かっていないことが多いと思うので、そんなモノサシに頼らず、自分のしたいこと・なりたい姿に正直に生きていくのがいいんじゃないかな~と思います。
それが難しいんだけど。
でも、あきらめたら死んでるのと同じだからなー。

女の子よ銃を取れ

女の子よ銃を取れ

ザ・フェミニズム

ザ・フェミニズム

□■□関連する記事□■□
yoshimi-deluxe.hatenablog.com

岐阜の印刷会社で働いてよかったと思うこと

地域で子どもだけでも入れる食堂を開いたり
ひとり暮らしの認知症のお年寄りの家を訪問したり
精神障害のある人が安心していられる小さな場所を作ったりする
本当に地道な、小さな活動と

大きな会社や、大きな会社と取引をしているような会社が
生き馬の目を抜くようなスピードで
海外や東京や、宇宙や、膨大なビッグデータを相手に
昼夜を問わず仕事をしていることとの

開きが大きすぎると思う。
こんなにかけ離れていては、どちらもどちらを思いやることがとても難しいと思う。
わたしは、どちらも、どちらかが持っているような価値観や、資源を必要としているのではないかと思っているんだけど、現状ではとても難しいと感じている。

月に一度以上は海外出張があり、出張帰りですぐに本社で会議、翌日は国内出張。その間に億を超える単位の商談の決裁をいくつか、さらにそのまたスキマ時間でジムに行き、部下の誕生日にプレゼントするワインを選んで送ってもらう。そしてまた新事業の立ち上げとクレーム対応。
かたや、母親は精神障害で家にこもったまま自分に対してなのか誰にたいしてなのか分からない恨み言を言い続け、バイトして生活費にする高校生。だけどいつ「元・高校生」になるかわからない。父親の顔は知らない。「しまむら」よりも安い古着屋で、できるだけ安くて長持ちしそうで新しそうな服を買う。
こういう人がそうじゃない立場の人について想像力をめぐらすことはとても難しいと思う。
でも、わたしは本当は、どっちもが、自分にはない価値観や文化・資源を、その真逆(に見える)階層の人たちが持っていて、それが、それぞれの階層のイノベーションに必要なんだと信じている。


と、いう話と関係あるのかどうか分からないけれど
きっと関係があるだろうと思っているので
わたしが岐阜の印刷会社で働いて良かったと思っていることを書きます。

新卒で入った会社は、たぶん岐阜でいちばん大きい印刷会社でした。
わけもわからず就職活動をして、マスコミとか広告代理店とかに行っていたのですが、この会社の説明会で一番印象に残っているのは(というかそれしか印象に残っていないのは)
人事の人が、工場の人が着ているのと同じ作業服を着て
「ウチはそんなに給料がいいというわけでもないし、残業も多いです。」
と言ったことだった。

それまでに回った他の会社の説明会では、キラキラギラギラした社員の人が、いかに仕事がクリエイティブでやりがいに満ちており、最先端の感性に触れられ充実したライフを手にしているかということだったので、わたしはこの会社の人事の人の話を聞いて「なんて正直な会社なんだ」と衝撃を受けた。

その後、役員面接では一通りのことを聞かれた後、なぜか役員*1の一人が
「僕ねぇ、昨日、名古屋に行ったんですよ。
 そしたらねえ~、公園にいっぱいホームレスの人がいて、ダラーっとベンチで寝ていたのを見たんですわ。
 石黒さん(←あたし)は、そういう人たちを見て、どう思うかね?」

と、聞かれて…
わたしはのちに名古屋の会社で働くようになって、ホームレス支援のボランティアをはじめたりするんですけど、当時は全くそんなことに思いもよらず、福祉の勉強も全然しておらず、興味もなく、ていうか福祉という言葉をほとんど聞いたこともなかったんじゃないかと思うんですけど。まさか就職の面接でホームレスについて聞かれるなんて思ってなかったのにも関わらず、なぜかこういう風に答えたんです。
「ホームレスになる原因には、ただ単に職がないというだけではなく、うつ病の問題が関係していると聞きました。だから、ただ単に怠けていると決めつけるのではなく、その背景にある問題に目を向けるべきだと思います。」
自分でもなんで咄嗟にこんな答えができたのか謎で、たぶん偶然見た「クローズアップ現代」とかの単なる受け売りなんだろうけど、でもこう言って内定を獲得した。

若い頃からものすごくひねくれていたので、堅気の社会人生活に適応することは難しかった。そのあたりのことはこの記事に書いています。
この記事にあるようないい上司に恵まれ、家族のような雰囲気の中で、アホでも失敗してもあたたかく見守られながら育てていただける、そういう社風が、自分みたいな世間知らずには良かったなあと思います。今でもそういう、のんびり育ててくれる会社ってあるのかな、と若い人と話したりするとたまに感じることがあります。

そしてもう一つ良かったのは、印刷会社という特性、かつ、ある程度の規模があり・かつ、ローカルな会社だという特性から、大きな会社から家族とか個人でやってるような小さな会社まで、規模も業種も色々な会社営業マンとして回ることができたということです。
大企業の岐阜支社にいる人ともお仕事をさせてもらえたし、ひとりで小さなエステ店をはじめるんです、という人の名刺を作らせてもらったこともあった。当時はプリントパックみたいなインターネット通販の会社もなかったし、個人や普通の会社で買えるようなPCやプリンタの性能もよくなかったこともあり、いろんなお仕事を気軽に印刷会社に頼んでもらえたんですね。チラシ・ポスター・伝票・報告書・パッケージ・ノベルティ…印刷物が必要ない業種って基本的にないですからね。通信会社もハウスメーカーも、美容院も新聞社も、医者もスポーツクラブも行きました。それぞれの会社に違ったルールがあり、違った文化があり、違った価値観を持っている人がいる。何を好ましいと思うかも全然違う。そういうことを実際に見て、話して、納品して感じられたことが自分には良かった。

それと同時に、企画から製造、納品までの過程を、ふだんの仕事の中でつぶさに見ることができたのが良かった。納期ひとつにしてもお客さんと、工場では捉え方が全く違う。考える・見積もる・決定する・デザインする・材料を仕入れる・版を作る・印刷する・断裁する・梱包する・配達する…ひとつの製品にはさまざまな要素があり、機能があり、関わる人の思い入れが違う。その中で、製品として完成されるアウトプットはひとつだけれど、たくさんの意味を持っている。お客さんと工場と上司と外注さんと…の間に立ってその全員から叱られながら、そういうことが分かって本当に良かった。世の中の流れや仕組みがわかったと思えること、その一端に触れられたと感じることの喜びは大きい。




地域で子どもだけでも入れる食堂を開いたり
ひとり暮らしの認知症のお年寄りの家を訪問したり
精神障害のある人が安心していられる小さな場所を作ったりする
本当に地道な、小さな活動と

大きな会社や、大きな会社と取引をしているような会社が
生き馬の目を抜くようなスピードで
海外や東京や、宇宙や、膨大なビッグデータを相手に
昼夜を問わず仕事をしていることとの

開きが大きすぎると思う。
でも、どちらも「自分が社会や世界の一端に触れられている」という生き生きとした感動に飢えているという点では、同じなのではないかと感じる。
わたしはクラブやインターネットが好きで、書くことが好きでいま生きている。そしてそのどれもが、生きることには直接的には役立たないように思われがちだけれども、きっと階層を横断し、境目を揺るがし、人と世界の接点に介入する装置だと思っているので、ずっと続けていきたいと思っている。

生きる歓び (中公文庫)

生きる歓び (中公文庫)

子ども食堂をつくろう!  ── 人がつながる地域の居場所づくり

子ども食堂をつくろう! ── 人がつながる地域の居場所づくり

ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

*1:この方はのちに社長になられた